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俵藤司
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料理/音楽鑑賞
自己紹介:
銀誓館学園に通う高校二年生。
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小話というか小説?
すっっっっっっっっごく暇な時にでもー(ぉ

僕が、一番幸せだと思っていたとき。
僕が、家族を一番愛していたとき。
僕が、世界を一番愛おしいと感じていたとき。
全てが終わりを…告げたとき。







~ZERO~






久しぶりに、家族と遠出。
車は、広い道路を、爽快に進んでいく。
家まで、あとちょっと。

「楽しかったね~」

車の中でそういったのは飛鳥で。
両腕には、買って貰った小さなイルカのぬいぐるみ。
大事そうに、ぎゅっと抱きしめていた。

「そう?僕はあんまり…」
「んなこと言ってる割には、結構楽しそうだったじゃん」
「そんな事…!」

けらけら笑って、飛鳥は僕を冷やかしていた。
まあ、確かに少しは楽しかったけど…。

「おいおい、車の中で喧嘩しないでくれよ?
 お父さん、もしかしたら事故っちゃうかもよ~」
「父さん、からかわない」

父さんと母さんのこんな会話もしょっちゅうで。
それが普通で、当たり前。
でも…それでも…。
一番幸せな瞬間だった。

行き成り車が揺れ、僕の視界には何も映らなくなった。

真っ暗な、闇










体の痛みに目を覚まし、体を起こす。
体のいたるところに擦り傷や、打撲の痕があった。
はっとなって、あたりを見回す。
父さんと母さん、飛鳥は…。

「うぅ……ん…」

飛鳥は、僕の4,5メートルくらい離れた場所に横たわっていた。
慌てて駆け寄ろうとしたが、体中が痛くて思うようにいかない。
やっとの思いで飛鳥の元まで行き、飛鳥の体を起こす。
飛鳥は痛そうに、顔をゆがめた。

「大丈夫?」
「ん…なんとか…。
 何があった……の?」
「僕にもわかんない。
 父さんと、母さんは?」

その時、やっと、気付いた。
後で、何か暖かいものが揺れている。
パチパチと、何か音を立てて。

怖くて、振り返る事ができなかった。
だって、想像できたから。
一体何が起こったか、判ってしまったから。

「……兄さん…あれ、なに?」

飛鳥に言われて、やっと振り返る事が出来た。
嗚呼、燃えている。
さっきまで、僕らを乗せていた黒いセダンが、逆さまになって燃えている。
轟々と、赤々と、揺ら揺らと。
燃えている。

「……ぁ?」

この声を出したのは僕だろうか?
わからない。
でも、その声は信じられないくらいか細かった。

車の窓と思われる場所から、手が覗いていた。
その手は、黒く焼けていて。
でも、それが誰の手かは、すぐわかった。

「……母さん?」

きらりと光る、銀色の腕時計。
僕と飛鳥が、一緒に選んで買った、母の日のプレゼント。
いつの間にか駆け出していた。
足や腕の痛みなんか、気にしない。
車を包む、赤い炎は、黒い煙の柱を作り上げていた。
近付くと、やっぱり熱い。
それでも、僕は黒く焼けてしまった母の手を握った。

「…母さん!」

引っ張ってみても、びくともしなかった。
僕が必死にひっぱている間にも、炎は次第に勢いを増していく。
ちりちりと、僕の肌を焼く炎。
それでも、手は離さなかった。

でも、でも…。母の手は、僕の手から落ちた。
振り払われた、と言ったほうが良いか。
弱弱しく。でも、確固たる意思を持って、振り払われた。
そしてまた、激しく燃える炎の中に、手は飲み込まれていく。
それと同時に、炎は一層激しくなり、僕は車に近づく事すらできなくなった。

わからなかった。
何故、母が僕の手を振り払ったのか。

わからなかった。
何故、僕たちがこのような事になったのか。

わからなかった。
何故、僕たちだけ助かったのか。

わからなかった。

何故

こんなにも

虚しいのか




『クスクスクスクスクス』




呆然としていた、僕の意識は、その笑い声に呼び戻された。
誰だ、こんな悲惨な状況で笑う奴は。

声は、少し高めの、女の子のような声だった。
本当に、可笑しそうに笑っていて…。
腹が立った。勢い良く、後ろを振り返る。
睨んでやる、そう思って、振り返ったのに…。

睨む気になんて、なら無くなった。
それどころか、僕の表情は驚きに変わる。

宙に浮く少女。
この惨劇を楽しそうに笑う少女。
少女の姿は誰にも見えていない。
だれも、少女を見ようとしない。

少女は僕の視線に気付いたのか、すすーと近付いてくる。
にやにや、にやにや。
気持ち悪い。目を逸らしたい、逃げたい、此処から一歩でも良いから遠くに行きたい。
でも、体は言う事を聞かない。

た す け て (誰に助けを求めてるの?)

そしてまた、僕の意識は深い闇に飲み込まれていった。



(コレが終わりで始まりで)



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